マレーシアは、人工知能(AI)を商業犯罪捜査に組み込むことで、法執行能力の近代化を大きく前進させようとしている。
サイバー詐欺やマネーロンダリングなどの金融犯罪が増加するなか、マレーシア王立警察(PDRM)は捜査の効率と精度を高めるためにAIに注目している。
しかしマレーシア当局は、この取り組みが機能するためには、警察官がAIツールの機能を理解し、AIが生成した洞察を解釈する能力を持つ必要があることを理解している。したがって、たとえAIを使った作戦全体であっても、膨大な量の人間の監視が必要になる。
犯罪捜査の進展を早めるAI
AIツールは、膨大な量のデータを人間の捜査員では想像もつかないスピードで分析する能力を備えている。疑わしい金融取引の追跡からサイバー詐欺のパターンの特定まで、これらのツールは捜査時間を大幅に短縮することができる。
例えば、マレーシアのPutraGPTのようなAIシステムは、すでに偽サイトやフィッシングを検知し、大量のデジタル証拠を処理する能力を実証している。
人工知能学会マレーシア会長のアズリー・シャレル・アフマド・ナズリ博士は、AIは数百万リンギットの犯罪に取り組むための画期的な手段になり得ると強調する。
同氏は、AIをバンク・ネガラの金融情報システムと統合し、不正口座や疑わしい取引をより効率的に追跡することを提案している。
AIはその将来性にもかかわらず、それを使う人間によってのみ効果を発揮する。アズリー博士は、警察官はAIツールの仕組みを理解し、その洞察を正確に解釈するための包括的な訓練を受けなければならないと強調している。そうしなければ、誤った解釈やテクノロジーへの過度の依存が生じ、不当な告発や証拠の見落としにつながる危険性があるからだ。
彼はマレーシアの大学やAIの専門家とのコラボレーションを提案し、商業犯罪捜査局(CCID)やサイバー犯罪捜査班の警察官向けにカスタマイズされたトレーニング・モジュールを開発している。このアプローチにより、法執行機関は技術的な知識と倫理的なガイドラインの両方を確実に身につけることができる。
多方面からの戦略
取り締まりにおけるAIの利点を最大化するために、アズリー博士はサイバー詐欺やマネーロンダリングなどの商業犯罪を手始めに取り上げることを提案する。これらの事件は複雑な金融の痕跡や多額の資金を伴うことが多いため、AIを活用したソリューションに最適なのだ。
また、マレーシア独自のニーズに合わせた高度な犯罪防止システムを開発するため、地元のフィンテック企業、サイバーセキュリティ企業、AI研究機関との提携を提唱している。
さらにアズリー博士は、AIを搭載したチャットボットと自動詐欺アラートを銀行システムに統合し、不審な取引についてリアルタイムでユーザーに警告することを提案した。このプロアクティブなアプローチは、犯罪を未然に防ぐだけでなく、デジタル空間で進行している脅威に対する一般市民の意識を高めることにもつながる。
その可能性は計り知れないが、法執行におけるAIの倫理的利用については懸念が残る。データのプライバシー、市民の自由、テクノロジーへの過度の依存といった問題に対処する必要がある。
アズリー博士は、公正さと説明責任を確保するために、捜査における人間の監視を維持することの重要性を強調する。また、適切な保護措置がなければ、法執行機関に対する国民の信頼を損ないかねない形で、こうした強力な手段を悪用する危険性があると指摘した。
前途
マレーシアが犯罪捜査にAIを採用することは、法執行能力の近代化において大きな前進を意味する。適切な訓練、戦略的な導入、倫理的な保護措置があれば、AIは捜査を迅速化するだけでなく、デジタル・システムに対する国民の信頼も高めることができる。
マレーシアが東南アジアでこの取り組みを主導することで、正義を最前線に据えながら、進化する犯罪手口と闘うためにテクノロジーをいかに責任を持って活用できるかの模範が示される。