マイクロソフトに対するFTCの反トラスト法違反調査、再び注目を浴びる
米連邦取引委員会(FTC)は、マイクロソフト社に対する監視を強化し、同社の膨大な事業活動に関する詳細な独占禁止法調査を開始した。
調査対象は、マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービス、ソフトウェアライセンスモデル、サイバーセキュリティ製品、人工知能(AI)開発など、複数の分野にまたがっている。
この調査は、競合他社やビジネス・パートナーへの1年にわたる非公式の聞き取り調査を経て、マイクロソフト社への詳細な情報提供の要請につながった。
この件に詳しい情報筋によると、FTCは数百ページに及ぶ包括的な情報提供要請を行ない、マイクロソフトはこれに応じる必要があるという。
これは、FTCのリナ・カーン委員長が要求を承認したことで、大幅にエスカレートしたことを意味する。
マイクロソフトのクラウド事業が非難を浴びる
FTCの調査の大部分は、マイクロソフトのクラウドコンピューティング事業、特にいくつかのサイバーセキュリティの失敗に焦点を当てている。
マイクロソフトは大手政府請負業者として、国防総省を含む米政府機関に必要不可欠なソフトウェアやクラウドサービスを提供している。
FTCの懸念は、マイクロソフトのクラウド・サービスが停止した場合、経済に連鎖的な影響を及ぼす可能性があることから高まっている。
例えば、2024年の初めにクラウドストライクがクラッシュし、ウィンドウズ・システム上で動作する数百万台のデバイスに影響が出たが、このような障害がいかに業界全体に波及するかを浮き彫りにした。
セキュリティ・ソフトウェアと市場の優位性
FTCが特に注目しているのは、マイクロソフトのセキュリティ・ソフトウェア、特にMicrosoft Entra ID(旧Azure Active Directory)の取り扱いである。
このツールは、クラウドベースのサービスにアクセスするユーザーを認証する上で極めて重要であり、競合他社はマイクロソフトのバンドル慣行について警鐘を鳴らしている。
マイクロソフトは、セキュリティやオフィスソフトをクラウド製品に含めることで、認証やサイバーセキュリティ分野のライバル企業の競争をますます難しくしている。
内部関係者によれば、このようなバンドル戦略はマイクロソフト社に不釣り合いな優位性を与え、複数の市場での優位性を確固たるものにしているという。
増大するAIの存在が懸念を煽る
マイクロソフトの影響力は、従来のソフトウェアやクラウドサービスの枠を超え、AIへの投資、特にOpenAIとの提携や独自のCopilotシステムの開発によって拡大している。
このAI分野への進出は、同社の確立されたビジネス慣行と相まって、欧州の規制当局がAI分野におけるマイクロソフトの役割について調査を検討するきっかけとなった。
こうした努力は正式な調査には至らなかったが、マイクロソフトの市場力をめぐる広範な精査に貢献した。
AIへの戦略的投資は、ゲーム、クラウド・コンピューティング、企業向けソフトウェアの分野ですでに確固たる存在感を示している。
独占禁止法への挑戦の長い歴史
マイクロソフトの反トラスト法調査の歴史は20年以上前にさかのぼり、1990年代後半にはウィンドウズとインターネット・エクスプローラーのバンドルに関する大規模な法廷闘争があった。
しかし、今回の調査は、1990年代とは大きく異なる状況でのマイクロソフト社のビジネス慣行にスポットライトを当てたものだ。
2024年現在、FTCは、マイクロソフトのソフトウェア、クラウド、セキュリティにまたがる様々なサービスの統合が、過去の懸念と同様に、競争を阻害する可能性があることを調査している。
FTCに待ち受ける独占禁止法の緊張
FTCのリナ・カーン委員長の退任が迫り、バイデン政権が終わろうとしている今、調査のタイミングは極めて重要である。
リナ・カーンは2021年以降、会長として米国連邦取引委員会を率いている。
ビジネスリーダーたちは、ドナルド・トランプ次期大統領の下、次期政権がビッグテック規制に対して異なるアプローチを採用する可能性があり、積極的な反トラスト法執行からの転換を示唆する可能性があると推測している。
しかし、FTCの調査は本格化しており、この事件やその他の事件の行方は、次のFTC委員長の手に委ねられることになる。
カーン氏のリーダーシップの下、同局が活動を続けるなか、業界はこの調査が具体的なアクションにつながるのか、それとも新政権下でお蔵入りになるのかを見守ることになる。
テック大手に対する規制圧力の高まり
マイクロソフトに対する調査は、大手ハイテク企業が直面する監視の目を厳しくしている一例に過ぎない。
米連邦取引委員会(FTC)のメタ社に対する措置と、現在進行中のグーグルに対する調査は、大企業の影響力拡大に対するより広範な懸念を反映している。
特にマイクロソフトのケースは、特にマイクロソフトのような企業がAIやサイバーセキュリティのような新しい分野に手を広げる中で、規制当局がハイテク産業における権力の集中をどのように扱うかという重要な問題を提起している。
この調査の結果はまだ不透明だが、その影響は米国における企業規制の将来を塗り替え、ハイテク部門全体に影響を及ぼす可能性がある。